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戦争を無くしていく新時代の始まり [平和論]

 1月20日のインタビュー記事を読んで、考えたことを書きます。テーマは、古谷修一
氏が言う「新たな時代の始まり」についてです。
 古谷さんは、ウクライナ侵攻がもたらしたものとして、3つの変化をあげています。
第1は、人権を中心に考える戦争観の変化。第2は、戦争観の変化にもとづく「戦争の終
わり方」の変化。第3は、これらにともなう「新たな時代」の幕開けです。
 第1の戦争観の変化というのは、古谷さんによれば、次のようなことです。
  「 第2次大戦を例に挙げると、連合国にとって何より重要な戦争犯罪は『日本が侵
   略した』ことであり、戦場での残虐行為などは侵略の結果に過ぎないと受け止めら
   れました。今回はむしろ逆です。ロシアの侵略行為以上に、ロシア軍の市民殺害へ
   の責任が、戦争の初期から問われました。」
  「 つまり、『人権』を主体として戦争のあり方が決められているのです。欧州の人
   々がこれほどウクライナの立場を支持する理由もここにあります。ロシア軍の行為
   を容認できない世論が、ロシアとの妥協を許さないのです」
 そして、その変化の大きな要因は、SNS発信を起点として戦争被害の映像が世界に流
れ、可視化されたことだと述べています。
 ここから、「人道問題なので簡単には妥協できないし、落としどころも見つけにくい」
ために、戦争の終わらせ方の変化も生まれているというのですが、私は特に第3の変化に
注目しました。
   「 人権への価値観が今以上に共有され、市民同士の連帯感が生まれる世界・・・
    新たな世界に向けた枠組みやルールをつくらなければならない。多くの人が、そ
    う思い始めているように感じます」
 要約すれば、ウクライナ問題の大きな衝撃によって世界中の人々の平和に関する意識も
変わり、国際機関の仕組みやルールもこの方向に変わっていくだろうという主張ですね。
実際にそうした変化が起きていくのであれば、歓迎したいと思います。
 しかし、私はさらに一歩を進めて、新しい時代を「もっと根本的な変化の可能性が開け
つつある時代」と捉えたいと思います。言い換えれば、「戦争という野蛮な行為がなくな
っていく時代」の始まりと捉えたいのです。ここからは、その考えを展開していきます。
 私の場合も、第1の変化は確かにおきました。重大な被害に苦しむ人々の映像を見て、
戦争は犯罪であるということを繰り返し思ったからです。同時に他の変化も・・・私の場
合は、安全保障に関する考えが大きく変わりました。それまでは、護憲と軍縮という路線
にとどまっていて、ある程度の抑止力の保持を肯定する立場だったのですが、ウクライナ
とロシアの戦争を見て、軍事的な抑止力では戦争は防げないと思うようになったのです。
同時に、戦争という行為自体が非人道的なものであり、自衛の戦争を含めて、すべての戦
争をなくしていかねばならない、と思うようになりました。
 私だけではなく、ウクライナ侵攻に反対する人々の中に、戦争そのものを否定する意味
で「早く終わらせたい」という思いも強くあったと思われます。多くの人が心情的にウク
ライナを応援しつつ、民衆の苦しみを終わらせるための早期終結を待ち望むという、いわ
ば「支援」と「反戦」のジレンマを味わってきたはずです。
 私は、上記の考え方の変化から、日本の安全保障については、非武装中立の路線が正し
い選択であると思うようになりました。また、現実的でもあると思っています。世界の他
の地域についても、今すぐには無理であるにしても、この方向へ向かって努力していくべ
きだと考えます。「新たな枠組みとルール」にもとづく国際秩序も、この歩みを促進して
いく性質のものにすべきです。抑止力を互いに低減していく、信頼関係にもとづく国際秩
序にしなければ、世界はまたしても悲惨な状況に陥っていくことになるからです。
 ウクライナ侵攻が世界に与えた大きなインパクトを考えれば、戦争の無い世界をめざす
変化が始まり、力を得ていく可能性は十分にあります。
 そのような意味で、私は、古谷氏の「新たな時代」というものの意味内容を「戦争とい
う野蛮な手段を無くしていく時代の始まり」に置きかえて、今後その共有化を図っていき
たいと思うのです。
                            以上

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(ウクライナ関連)戦争犯罪の追及 なぜ活発に? [平和論]

インタビュー記事の紹介
                      2023.1.28 小宮
 1月下旬のある日、届いた夕刊のページをめくっていたら、ウクライナ
関連のインタビューが目に入りました。ざっと目を通すと、私が昨年春か
ら抱くようになった、ある考えを含んだものであることがわかり、内容に
惹きつけられていきました。
 その考えとインタビュー内容についての感想は、別の文章にまとめて書
こうと思います。ここでは、資料提供を目的として、このインタビューを
多少縮めて紹介します。
 読んでくれた皆さんの感想も、もちろん歓迎します。
******************************
「戦争犯罪の追及 なぜ活発に」朝日新聞(1月20日・夕刊8面)
語り手:古谷修一(早大教授)
インタビュアー:国末憲人

(前書き) ウクライナでのロシア軍の戦争犯罪を追及する動きが
早くも本格化している。国際世論の強い関心がその営みを支える。
なぜ取り組みが活発なのか。国連の自由権規約委員会でロシアの審
査に加わった、国際人道法の専門家・古谷修一さん(64)にジュネー
ブで尋ねた。
(以下は、記事の中でとくに注目した部分の抜書き)
戦地の映像が世界へ
 ウクライナ情勢は今や、国際法学者らにとっても最大の課題だ。
その中で今回注目を集めたのが、国際刑事裁判所(ICC)の素早い
動きだと言う。(中略)この違いの背景には、戦争観の根本的な変化
があると、古谷さんは考える。
 「第2次大戦を例に挙げると、連合国にとって何より重要な戦争
犯罪は『日本が侵略した』ことであり、戦場での残虐行為などは侵略
の結果に過ぎないと受け止められました。今回はむしろ逆です。ロシ
アの侵略行為以上に、ロシア軍の市民殺害への責任が、戦争の初期か
ら問われました」
 「つまり、『人権』を主体として戦争のあり方が決められているの
です。欧州の人々がこれほどウクライナの立場を支持する理由もこ
こにあります。ロシア軍の行為を容認できない世論が、ロシアとの妥
協を許さないのです」
 では、なぜ世論がこれほど、被害者の人権に関心を持つようになっ
たのか。大きな要因は、SNSの急速な発達によって市民のスマホ
映像が世界に流れ、現場が可視化されたことだと、古谷さんは説明す
る。
 「ミサイルを受けて崩れたアパートの様子も、亡くなった人びとの
遺体も、実際に見える。人々はその映像から『自分のところにミサイ
ルが落ちたら』と考える。戦争を、国と国との戦いという抽象的なレ
ベルではなく、もっと身近なものとして受け止めるようになったの
です」
 日本でもウクライナへの関心は依然高い。「具体的な人の情報が入
るからだと思います。遠い国であっても、子供が殺された、家族が殺
されたことに対しては、同じ人間だから同情を感じますよね」
終わり方まで変わる
ただ、変わるのは、戦争のイメージだけではないようだ。「実は、
戦争の終り方も変わると思います」
 「昔だったら、戦争には落としどころがありました。首脳同士が『領
土はここまで』などと交渉したかもしれません。でも、今回は誰もプ
ーチン大統領と交渉できません。プーチン氏はロシアの指導者であ
るとともに、重大な戦争犯罪人。『戦争犯罪人と交渉するのか』と問
われる」
 古谷さんはこれを「正義と平和との相克」と呼ぶ。これまでは、清
濁併せのんで妥協することで戦争は終わり、「平和」が実現した。し
かし、正義に妥協の余地がない。妥協は、犯罪者との交渉を意味する
からだ。
戦争をやめられないとすると、どうすればいいのか。
「そこが問題です。戦争は、永遠には続けられません。どう譲歩し
てどう終わらせるのかと考えながら進めるのが、従来の戦争のやり
方でした。でも、戦争が『犯罪』と化した、あるいは戦争が『人権問
題』と化した世界では、妥協が難しい。それを世論が許さないからで
す」
「クラウゼビッツの理論を持ち出すまでもなく、戦争はかって、政
治の道具でした。政治的妥協を引き出すための方法の一つだった。今
は、そのようなものではない。明確な人道問題なので、簡単には妥協
できないし、落としどころも見つけにくい」
「それは、戦争が国レベルの関係ではなく、人間関係のレベルで語
られるようになったとも言えます。『戦争の犯罪化』は、つまりは『戦
争の個人化』です。個人の話として議論されるために、国家の話とし
て妥協するのは難しくなったのでしょう。
市民の連帯感に期待
 一方で、こうした傾向は、新たな時代の幕開けを意味するかもし
れないという。一例は、ウクライナ侵攻に関して昨年3~4月、IC
Cに捜査を付託した国が、日本を含めて43カ国に及んだことだ。
 「ウクライナを巡る国際裁判は、ウクライナの利益にとどまらず、
国際社会全体の利益と位置づけられている。これには、世界が何か違
う時代に入りつつある予感が伴います。今回の出来事は、『冷戦後の
世界』から『さらに次の時代』に入る境目にならないでしょうか」
 ロシアがウクライナに侵攻した時、これで時代が変わると考えた
人は少なくなかった。しかし、そこで想定されたのは、軍事大国が力
にモノを言わせて好き勝手に振る舞う秩序なき時代の到来だった。
ウクライナ側の反撃によってその恐れは遠のいたが、古谷さんの考
える新時代は、そのような恐怖の時代とは逆だ。人権を中心に据えた
希望の抱ける時代である。
 「やや理想を込めて考えると、人権への価値観が今以上に共有され、
市民同士の連帯感が生まれる世界にならないか」
 実際、ウクライナで今、人々が求めるのは「平和」だけではない。
踏みにじられた「正義」を回復したいと、多くの人が願っている。そ
の思いは実際に、世界に広く共有されつつある。
 「新たな世界に向けた枠組みやルールをつくらなければならない。
多くの人が、そう思い始めているように感じます」
******************************

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ウクライナ侵攻の原因について [平和論]

 2023年1月3日、同級生たちのメーリング・リストに送信したメールの中で、
以下のように論じました。同級生同士なので、吉成修太郎と記名しています。

*************************************
 ウクライナ侵攻について、私は以下のように見ています。
 主な歴史的原因は、冷戦終結後のロシアの経済的混乱・落ち込み・苦しみがプーチ
ンという危険な思想の持ち主を大統領として登場させたことにあります。これは、第
一次大戦後のドイツがたどった道と似ていますね。
 そのプーチンは、豊富なエネルギー資源を利用してロシア経済の立て直しを実現す
る一方、高い支持率を背景に軍事的にも強いロシアの復活を目ざしていきました。そ
の背景には、彼の強烈なナショナリズム、愛国思想があります。ロシア民族の誇
り・・これも、ヒトラーと共通していますね。
 彼は大統領就任後、いろいろな地域で軍事行動を起こしてきましたが、その延長線
上にウクライナ侵攻もあります。なぜ、この時期にウクライナか・・これは、プーチ
ンの年齢を考え、元気なうちにというのが、決定の理由だったようです。
 なぜ、ウクライナかと言えば、NATO陣営と対峙する上で、ウクライナは是非と
もロシア寄りの政権が支配する国であってほしいという動機があったと思います。ベ
ラルーシのような国であってほしいわけですね。そうなれば、事実上、大ロシアの復
活が実現できます。また、NATOに対する緩衝地帯にもなるので、ここは是非とも
欲しいと思っていたでしょう。当初は東部のロシア系住民を守るため、とか言って、
正当化していましたが、ゼレンスキー政権の打倒と傀儡政権の樹立が目的であったこ
とは明らかです。
 プーチンのNATOに対する恐怖心は非常に強いようです。被害妄想とも思えるく
らいに・・。ところが、それにもとづく行動が、逆にNATOの拡大を招いてしまっ
ているのだから、馬鹿なことをしているなあと思いますが。
 アメリカの責任もありますね。直前のバイデンの言動が抑止効果を失わせたという
こと、これも大きかったでしょう。さらに歴史をふりかえると、イラクなどでのアメ
リカのやり方を見て、軍事侵攻による政権のすげ替えをやってもいいんだとプーチン
が思うようになったという話もあります。
 ウクライナの人々の思いは、どうなのか。これも歴史をふりかえって、理解すべき
だと思います。長い話になるので、ここでは文献紹介にとどめておきます。
  黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(中公新書)が古代から現代までを
よく説明してくれているので、おすすめです。
                     吉成修太郎

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